「初音ミク」の特徴。その1。初音ミクと「わたし」

音楽屋なのにさいしょっから歌詞の話。
特筆すべきは、歌詞の中に出てくる率が高い「わたし」の3文字。


普通の歌詞で「わたし」は、「聴き手自身」にトレースされる場合が多いと思います。
性別とか、性格で、どうしてもトレースできない場合も多いかとは思いますが、
感情移入推進型の「わたし」も多いと思います。
もしくは、第三者としての「わたし」もあるけれど…


J-popで歌い手本人を示して「わたし」はなかなか聴かないと思いません?
まあやってたらちょっと痛いですけどね。
ラッパーが「俺」ってたまに言うか。


初音ミクが歌詞で「わたし」って言ったとき、
PVにオリジナルキャラでも書いてなければ、「わたし=初音ミク」に
…「なっちゃう」わけですよ。加えてPVにも自分が載ってるしね。


「わたしを誰だと思ってるの?」
「わたしは歌うから」


論旨的には「ワールドイズマイン」(ryo氏)が伝わりやすいと思うけど。


じゃあ「わたし」だとどうなるか、っていうのは、
NSIのコミュニティで書いた文章なんですけど、
受け手の「初音ミクのキャラクター」というところに瞬時にアクセスされるんですよね。つまり、「キャラクターのデータベース化」の影響。


「創られた今までの曲+今までの曲を聴いた(派生動画を見た)受け手の知識」
によってもたらされる、個々人の初音ミクというキャラクター像に、
「わたし」という言葉だけでアクセスされます。


ライトノベルの「魔女っ娘」「委員長」と同じ役割といえますね。初音ミクの「わたし」は。瞬時にデータベースとリンクする点において。


だから、形成されたこのキャラクターを利用する分には、存分に利用できます。
しかし、「わたし」が内包する意味が多すぎるために
細かい心情やデータベースの想定外のことは、キャラの行動様式が予想されて
しまうため、書くのが難しかったりします。


この「受け手のリテラシー」徹底的に利用するか、徹底的に利用しないかがいいと思うのです。
「ワールドイズマイン」…徹底利用
「θ」 cosMo(暴走P)  …徹底不利用


ブンガク的にみれば
初音ミク=キャラクター    J-popの歌い手=登場人物
こんな違いがあるかもですね。初音ミクが共有財産だからでしょう。


まあ、この事実があるからといってCDショップでアニメの棚に
Re:Package」を置くのはおかしいですけど、
あくまで「わたし」から取れる事実でした。


あと、「ぼく」じゃなくて「わたし」なのにも意味アリだと思うんですよね。
「きみとぼく」=「セカイ系」を排しているし。


それでそれで。この大事な大事な「わたし」の3文字なんですけど。
実際創ってみるとかなり発音が難しいんですね。
DTMマガジンで1ページ特集が組まれるほど。
なんていうか、音程によっては「た」が強くなりすぎたりとか。


と、いうわけで、ミク曲の「わたし」が何を指してるのか
考えながら聴くと面白かったりします。
「きみ」が誰を指してるのか考えると、広がります。


例示させていただいた作品の作者さん…
ええと、突然横からですけど、どうもありがとうございました。