「炉心融解」−ムジカルテ 1枚目−

作曲:iroha 作詞:orange ビジュアル:nagimiso



 12月投稿のこの曲は、ニコニコ動画界で爆発的なヒット。現在86万再生を超えています。
 この曲の魅力として、曲全体を覆いつくす「緊張感」がいえると思います。この独特の緊張感を生んでいるのは何なんでしょうか。

 ひとつめ、「充実した下半身」が挙げられると思います。動くベース、ドラムによるリズムなどが定型で、一定の動きを保ち続けています。たとえばユーロビートなんかではベース・ドラムは比較的一定ですが、強い安定感を生みます。「大宰府」の跡地が印象的なんですが、昔の木造建造物って柱の下に石を敷くでしょう、そして、それが整然と並んでいる。それを見れば建物の磐石さに安心がおけるような、そんな「下半身」だったと思います。

 ふたつめ、「firm」「strict」「厳格」というイメージもいえます。リズムに厳格、音がだらだらのびない、「キチッキチッ」と動く音楽のイメージです。ブルースのベースの「ゆるさ」の対極のイメージと思えば分かりやすいかもしれません。必然的に、エレピの音も硬めになります。ただし、それが、「ガチガチ」に固められた印象ではないのがすごいところかなーと思います。

 みっつめ、サビ前のブレイク。一度無音になりますが、ここは4拍でなく、6拍ですよね。常識よりも、「長いタメ」です。ロックマンでもそうですが、長く「タメ」た場合、敵に隙を見せる(=曲に不安定さをもたらす)一方、破壊力のある弾(=サビ)が撃てます。この無音区間の生む緊張感は、そのインパクトのある「落ち続ける」サビを引き立てているでしょう。


 じゃあ、こうした「緊張感」→「磐石さ」に支えられた音楽は何を生むかというと、「遊びの余地」を生むのではないでしょうか。たとえば、下半身が安心だから、「超高音ボーカル」も繰り出せますし、「跳躍だらけのサビ」も繰り出せます。これらは通常、すごく不安定さを伴うワザです。
こうした音楽の「下半身と上半身の協調」が、このとにかく飽きない曲を生んだんだと思います。


 最後に、サビの部分ですが、音程も、歌詞も、動画も、すべてが「落ちていく」んです。ここが完璧に符合する制作のチーム力が本当にすごいと思います。